ボランティア学習の育む“学ぶ力”の深遠な世界をめぐり白熱の議論 |
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“新しい知性”を育む可能性 |
第6回『日本ボランティア学習学会』東京・武蔵野大会は、約200人の参会者が集い、2003年12月6日・7日の2日間にわたって、亜細亜大学キャンパスを会場にして開催されました。
初日の基調講演では「子どもの社会力をはぐくむ」を演題に、門脇厚司・筑波大学教授が講演。ボランティア学習は、多様な他者と直にかかわり、他者を理解し、他者に共感し、他者との相互協力を不可欠とする学びであると定義し、子どもの社会力を育むために大きな役割を果たし「総合的な学習の時間」は絶好の授業であると提言しました。
塩崎千枝子・松山東雲女子大学教授をコーディネーターにして、4人のパネリストにより「ボランティア学習が拓く“学力”」をテーマに開いたオープニング・シンポジウムでは、
ボランティア学習と学力観をめぐる白熱した議論が行われました。
榊定信・熊本県立玉名高校教諭は、地域に生きる人びとの苦渋の歴史と希望への模索などの“生きざま”に触れた青少年が、共感し共に行動するなかから自己変革を遂げていく世界こそが“学ぶ力”であると提案しました。
進学塾の講師であり、受験期の若者たちと海外協力活動を実践している、阿木幸男・カンボジア教育支援基金代表は、受験戦争の勝者・敗者にかかわらず、自分自身の存在の認知は、思春期をささえる不可欠のテーマだ。学ぶ喜びや、学ぶことの意味を発見するためには、社会的不条理と闘う人びとと、ともに働く体験こそが大切だと体験をとおして問題提起しました。
瀬戸純一・毎日新聞論説副委員長は、最近の政府による教育改革の動きを取材した経験をもとに、かつての「個性」「ゆとり」重視の学力観から、いわゆる“学力重視”への転換論議にふれつつ、青少年がかかえる内発的課題と現代の教育制度の乖離が深まることが懸念されるなどの危機感が報告されました。
菊池龍三郎・茨城大学教授は、ボランティア学習は“新しい知性”を育む可能性をもっている。いろいろなことを“知っている”だけの人は、もはや知識人とは呼ばないだろう。社会的な実践のなかで「人は誰でも教えられる、人は誰からでも学べる」ことを知り、社会的な実践をとおして学ぶことができる人こそが“知識人”に値する。ボランティア学習は、学び手と周囲の環境とのあいだに、新しい関係をつくり広げながら、自分と社会についての新しい発見をしつつ、現実をつくりかえる動きに発展する学びでもある、と分析しました。
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多様な分科会や模擬授業で活発に議論 |
フォーラム2日目は、ワークショップによる「模擬授業」が、小・中・高校、大学、ボランティア・コーディネーターを対象に想定して行われました。参加者を生徒・学生などにして実践的なノウハウを研究する試みは、参加者の強い関心を呼びました。
また、会員による自由研究発表では、サービス・ラーニング、生涯学習、学校支援ボランティアなどの分野から充実した研究発表が行われました。
10の研究テーマを設定して行われた分科会で基調提案などを行ったコーディネーター、コメンテーター、事例発表者は総勢50人以上で、教育関係者、研究者、NPO・NGOなどの市民セクター、中間支援機関コーディネーター、学生とさまざまで、ボランティア学習研究の領域の広さを表わしていました。
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2004年度は京都で開催 |
フォーラム初日に開催された『日本ボランティア学習協会』理事会ならびに会員総会では、2002年度から2003年度の事業報告・計画や決算報告・計画案が審議されるとともに、研究フォーラムの次期開催地を、2004年度は京都大会(11月20・21日で調整)、2005年度は長崎大会、2006年度は北海道大会を予定することに決まりました。
2004年度・京都大会の詳しい日程等は、調整できしだいホームページで報告します。
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(文責:興梠 寛) |